行雲流水

 「夜間中学」と題する一編の詩が語る―僕はここへ来て人間としての喜びを知った。0が○や×の記号ではなく数であることを知った僕の驚き。―僕の書いた字を他の人に読んでもらった感激。―文字の世界が僕の前に開け、知識がどんどん僕の中に入ってくる。万歳! 夜間中学! それはわたしに、新しい生命を与えた▼この詩は、学齢期に学校に行けずに、後で夜間中学で学んだ一生徒の作品で、学ぶことの意味や喜びの原点を考えさせる▼語られることは少ないが、本県でも終戦からかなりの期間、中学さえ卒業出来ない子供たちが少なからずいたことを忘れてはなるまい。加えて、高校教育の段階では、他府県に比べても入学定員が少なく、教育の機会均等が十分に保障される状況になかった。そういう時代を背景に、働きながら学べる定時制高校の設立は多くの青少年に大きな光明を与えるものだった▼去る3月1日、宮古高等学校・定時制過程は総計1867人の卒業生を世に送り出して、52年の幕を閉じた。最後の卒業式と閉課程式、記念碑除幕式が催され、「思い出を語る会」が盛会裏に行われた▼その一角で、かつての生徒たちと担任が話している。そこにハワイと八重山に住む級友が携帯電話で参加、思い出話に花を咲かせていた。彼らの過ごした学園には、何よりも友といる喜びがあった▼除幕式では、今はよき社会人として活躍している仲間たちの喜びと誇りを、代表が熱く語った。彼らの学び舎は、希望の星がきらめき、見つめる「星苑」であった。

(2005/03/09掲載)

top.gif (811 バイト)