行雲流水

 センター試験も終わり、受験生は、公表された正答表をもとに自己採点を行い、予想される得点を参考に受験する大学を決定する▼ところで、出題された問題は、新聞紙上に掲載され、高校生たちの学習する内容を知る絶好の資料となる。とは言っても、そう簡単に理解できるものではない。そこで、社会人が日頃接する情報と重なる内容の多い「現代社会」の出題内容をみてみることにした▼第1問では、環境問題を考えさせている。森林破壊や地球温暖化、酸性雨と日常生活とのかかわり、さらには公害問題、そのために近年制定された法律や、環境を守るための国際的な取り組みなど、環境に関する総合的な知見が問われている。第2問では、行政改革と社会権的基本権について考えさせている。たとえば、行政改革の名のもとに弱者の保護を内容とする社会的基本権まで空文化されることの問題について、その認識が問われている▼第3問では、青年期における自己の確立と発達の課題について考えさせている。欲求不満に直面したときの防衛機制として、リビドー(性的エネルギー)を芸術活動等に高める「昇華」や、目標や手段を他のものにおきかえて心的緊張を一時的に解く「代償」などについての知識が問われている▼その他、ガット(関税および貿易に関する一般協定)、60年代の「失われた10年」と社会の変化、憲法と安保条約、世界の人口と貧困等への理解が問われている▼「ヒトは学習によって人間になる」。高校生をこの視点でみることが重要である。

(2005/02/09掲載)

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