行雲流水

 各地で成人式が催され、新たに大人への仲間入りを果たした若者たちが祝福と激励を受けた。何時の時代でも、次代を担うのは若者であり、彼らに対する期待は大きい。そのことを自覚して、新成人たちが着実にそれぞれの人生を切り拓いてほしい▼二十歳を迎えた彼らは更に、自己を築き、自己を発見し、社会に貢献する中で個性を発揮、自己実現を果たす。このことが基本的に重要で、その「場」が保障され、十分に活用される社会こそが希望の持てる良い社会と言える▼世の大人は彼らに「責任を果たせ」、「希望を抱け」、「挑戦せよ」と激励しながらも、一方では彼らのおかれた現実の厳しさを考えないわけにはいかない。彼らは高齢化社会を支える戦力として期待されながら、仕事もろくに無いのが現実である。また、ここでも、脚光を浴びる一部と努力しても報われない層の二極化が進んでいる▼若者を囲む価値観の歪みや混乱も憂慮される。露呈する社会のひずみ、金や物の価値が極端に重視される社会は、目標も理想も見えにくいものにしている。地道に価値の創造に努力している人々より、テレビに映って目立つ人が「偉い」と錯覚され、若者たちが自己投影をするモデルとなって強い影響を及ぼしている▼このような混迷の時代には原点を見つめることが重要ではないか。人間としての誇りとかけがえのない自分、人類が営々として築いてきた普遍的な価値を見失うことなく、人間的な力を貯えてほしい▼時代は、彼らを暖かく見守ることを強く求めている。

(2005/01/12掲載)

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