行雲流水

 諸羽(もろは)うちふる鶏(くだかけ)は咽喉(のんど)の笛を吹き鳴らし、今日の命の闘いの装いせよと叫ぶかな(島崎藤村)。闘いを、戦後日本の理想である平和で民主的な文化国家の建設のための努力と読みかえたい▼稲作文化で育まれ勤勉な国民性と教育の普及に支えられた科学・技術や芸術・文化の振興によって、わが国は未曽有の発展を遂げた。しかし、戦後60年、内包する矛盾やひずみがいよいよ明らかになってきた▼例えばそれは一世をふうびした「帝王」たちのていたらくに象徴的に見られる。海老沢(NHK)、渡辺(読売)、堤(西武)、中内(ダイエー)、橋本(元総理)たちを見よ▼国益・利権を「正義」と強弁する「裸の王様」とその同行者。メディア社会で人間らしい感性や想像力をなしくずしにされる観衆。その中で、基地の重圧と財政依存の表裏一体の体質が沖縄にもたらすひずみ▼こうした現実の中で、本紙「宮古毎日新聞」は「郷土色豊かに確かな視点」をスローガンに創刊50周年を迎える。もとより、公正な記事と責任ある論評によって、公共的、文化的使命を果たすのが新聞である。また、ローカル紙には、望ましい地域社会の形成と読者の生活の充実に資する責務がある▼ちなみに、新年特集号の第1集は「美ぎ島目指して」と題されている。続いて、「変化」、「明日へ」、「活きる」、「団らん」、「羽ばたく」、「想い」と特集が組まれ、希望へ向かう人々の鼓動が伝えられている。酉年にちなんで、紹介される鳥たちは「より美しく舞い、より高く飛翔する」。

(2005/01/05掲載)

top.gif (811 バイト)