行雲流水

 イルミネーションが華やかに夜景を彩り、クリスマスや年の瀬の到来を告げている。ところでクリスマスはキリスト教徒だけでなくわが国でも国民的行事となっているように思う▼神道のわが国に仏教を取り入れたのが聖徳太子で以来「神仏混淆(しんぶつこんこう)」社会を形成してきた。しかし今やかつての内村鑑三らの教えによる無教会主義などキリストの教を信望するものを入れれば「神仏基督(キリスト)混淆」と言えなくもない▼インド1億の仏教徒のリーダーとなった佐々井秀嶺師は、48年前40万人ともいわれる人々を導きヒンズー教から仏教徒に集団改宗させたという。今日インドで釈迦と同格に崇拝される日本人がいるというのは驚嘆に値する▼かつて釈迦はヒンズー教徒であり、その教えが仏教になった。またユダヤ教やキリスト教と土着の宗教との混淆から生まれたのがイスラム教であると言われる。根っこは1つの、これらの宗教の3つ巴的現象が紛争の原因と言われるのは悲しい。かつてわが国も軍閥による、神道・天皇現人神(あらひとがみ)思想が軍国主義を生み、悲惨な太平洋戦争の結末となった▼ダーウィンの進化論もアインシュタインの相対性理論もまさに相対的進化の思想である。唯一絶対的ではなく、真理は1つだが相対的にとらえる▼円筒形の筒を横に切れば丸になり、縦に切れば矩形(くけい)に、斜めに切れば楕円になる。「真理は1つ、切り口の違いで争わぬ」と賢者は説く。靖国参拝の是非を含め、今日のわが国は宗教的に進化した国かもしれない。

(2004/12/24掲載)

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