行雲流水

 テレビ番組の低俗さが批判され、「一億総白痴化」という大宅壮一氏の造語が流行したのは半世紀も前のことである。現在、テレビを中心とするメディアの青少年や社会に対する影響は当時と比較にならない程大きくなっている▼先に行われた米大統領選挙の両候補の演説はその内容よりもメディアでどう評価されるかで影響が大きくなると言われた。操作された映像で戦争のイメージもつくられる。バラエティー番組でもスポーツ番組でも同じ。だから視点も画一化され、流行が加熱する▼今年の流行語を見て見よう。大賞は「チョー、気持ちいい」である。「気合だ!」とともに、違和感を覚える。「サプライズ」の次元の低さ。「自己責任」と「負け犬」はことの本質を覆い隠すのに使われた▼「冬ソナ」も入っている。ヨン様ヒステリーは世界の人々を驚かせている。夫は仕事中心、子供は巣立っていって愛の巣が空っぽになるときの空虚感から起こるいわゆる「空巣症候群」と流行への過剰反応が引き起こす現象だろうか▼近年、日本でもメディア・リテラシーの教育の重要性が言われるようになってきた。メディアを読み解く能力のことである▼流行に左右されない、人間の思想や感情、存在に根ざす不易なる言葉とその意味することも大切にしたい。ちなみに、英国文化振興会が英語圏以外の国でアンケート調査した結果、いちばん美しいと答えた英語は「マザー(母)」が1位で、次いでパッション(情熱)、スマイル(微笑)、ラブ(愛)、エタニティー(永遠)が挙げられている。

(2004/12/15掲載)

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