行雲流水

  全国重要無形文化財保持団体協議会等の主催で第12回「日本の伝統美と技の世界・重要無形文化財保持団体秀作展」が平良市総合博物館で開催された。会場には、生活と風土の中で生まれた芸術性と歴史的価値の高い陶芸、染織、漆芸、和紙等の作品が展示され、多くの市民が鑑賞に訪れた▼小千谷縮(おじやちぢみ)・越後上布の説明には鈴木牧之の『北越雪譜』からの引用がある。「雪中に糸となし、雪中に織り、雪中に洒(すす)ぎ、雪中に晒(さら)す雪ありて縮みあり」。柳宗悦の『芭蕉布物語』によると、喜如嘉(きじょか)の芭蕉布は寒さに弱く、寒くて乾燥していると糸が折れてしまうという。優れた工芸品が、技とともに風土に深く根ざしていることがわかる▼本美濃紙の魅力は、柔らかみのある温雅な紙色と、陽の光に透かして見た時の繊維が縦横に整然と絡み合っている美しさである(本美濃紙保存会)。現在書籍等に使用されている酸性紙はせいぜいもって100年だといわれているが、奈良の正倉院には大宝年間の戸籍用紙として本美濃紙が所蔵されている▼宮古上布は、苧麻(からむし)からの糸紡ぎ、手括り、染色、機織り、洗濯加工等の各工程の洗練された技術の連携で美しく織りあがる(その全工程が文化庁企画のビデオ映像で紹介されていた)▼八重山のミンサーは婚約成立を記念に女性が男性に贈ったものである。布に色々な人間関係を織り込んだ伝統は世界で広く認められるという(記念講演)▼文化財に、美を求める人間の本質と、物づくりの原点をみる。大量生産、大量消費で失ったものを考える。

(2004/12/08掲載)

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