行雲流水

 「母なる大地」や「大地に根をおろす」などと使われる大地は、万物を守り育むもの、よってたつ確実なものをイメージさせる。だから、そのゆらぎは人々に大きな不安を与える。地震だけではない。人類が営々として築いてきたあらゆるシステムの基盤が今ぐらついている▼「共生」の理想はないがしろにされ、弱肉強食の競争が展開されて、格差は広がる一方である。いわゆるグローバル化によって途上国の人々の食糧自給のシステムは壊され、多くが飢餓に苦しんでいる▼また、地域紛争が悲劇を深刻なものにしている。国際的な軍需産業界には次のようなルールがあるという「紛争の挑発と拡大に寄与する行為には、国籍を越えて協力し合う」(広瀬隆著『アメリカの巨大軍需産業』)。途上国の戦争の惨禍と武器購入の負担は経済発展の大きな障害となっている▼いわゆる三位一体の改革による補助金の削減、義務教育国庫負担制度の廃止、一般財源化への移行は、自主財源の乏しい市町村の財政を危機に陥れ、義務教育水準の格差を生むことは確実である。全国どこでも一定水準の行政サービスと教育の水準を確保出来るようなシステムが今危機に瀕している▼大企業と中小企業の労働条件の格差も拡大している。リストラが横行、この10年で非正規雇用者が1・5倍に急増、1時間当たりの賃金も正規雇用者の4割程度である▼極端な格差の拡大は、世界を、社会を不安定にするひずみとなる。格差の変動を計る物差しで、世界や国、社会をみるのも重要な視点である。

(2004/11/24掲載)

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