行雲流水

 イギリスのブレア首相は就任の時の記者会見で、「優先すべき政策を3つ挙げなさい」という記者の質問に対し、「1にも、2にも、3にも教育だ」と答え、教育予算の増額にとり組んだ。社会の正常化、持続的発展の基礎としての教育の重要性はどの国にも共通して言える▼ところで、最近のわが国の教育には憂慮されることが多い。1つには、予算についての問題である。公立小中学校教職員の給与の半額を国が負担している義務教育費国庫負担制度の廃止、同負担金の一般財源化への動きである▼文部科学省は、同制度はわが国の義務教育を支える根幹をなすものだとして、その堅持を主張しているが、全国知事会は税源移譲の見返りに受け入れる方針である。小泉首相も、知事会の意向を尊重する姿勢を表明している▼そうなると、東京都等の都市部の収入は増え、他の多くの道府県は減収になる。また、一般財源化によって、地方に裁量権のない義務的経費だったものの一部が、教育以外の事業に充てられる可能性が高くなる。その結果として義務教育の地域格差が拡大することは必然である▼格差是正のために税制を手直しするという。また尾身元沖縄相は沖縄特例措置の必要性を語っている。しかし、一連の改革は、国庫の地方への支出を削減するという基本的な方向性を持っていることを忘れてはなるまい▼自治体の自助努力はもとより必要であるが、この際、教育を守るということを含めて、住民がコミュニティーづくりへの主体的意識を持つことが肝要である。

(2004/11/17掲載)

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