行雲流水

 以前に聞いた話だが「日本人の顔が変わった。…だんだん時代劇に不向きな顔になった…四書五経を読んで育った精神的基盤がなくなったせいであろう」と、また「マンガばかり読んでいると、マンガみたいな顔になる」とも▼「論語」「孟子」を読めということではなく、良書を読むことが心の糧となり、それが深みのある顔を生みだすという喩えだろう▼全国学校図書協議会などの全国調査で毎年実施している項目に1カ月に読む冊数というのがある。それによると小学生が8冊に対し中学は2・8冊で、高校は1・3冊ともっとも少ない。過去の推移でも小・中・高校の格差は変わらないが概ね右肩あがりのグラフに少々の明るさを見る。読書活動の推進、「朝の一斉読書」の普及が効を奏しているとの評があるが、反面不読者(ゼロ冊)も増加していて読書の二極化が進んでいるという実態がある▼一般でも年間に1冊も読まないのが30%もいるという。飽食同様、本の氾濫で読む前に飽きてしまい、買ってきても積読になり、またつまみ食いのようにつまみ読みをしていまいか、これでは心の糧にはなるまい▼求める情報を得るのに、忙しい人ほど時間の節約のため速読が要求されるが、しかしゆっくりと味わって読むことも大切で、文脈をたどり、行間を読むような読書のよさを見直したい▼10月27日〜11月9日は読書週間である。テレビばかりでなく、秋の夜長はじっくりと心の栄養を取りたいものである。

(2004/10/29掲載)

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