行雲流水

 8月、勝連町与勝地域の中・高校生たちがさいたま市で演じた組踊「肝高阿麻和利」(脚本・嶋津与志、演出・平田大一)の公演について、実行委員の1人木下明美(埼玉大学4年生)さんは、その反響を次のように報告している▼舞台終了後、観客はしばらく席を離れなかった。余韻にひたっていたのだろうか、誰も動かなかった。ようやくちらほらと会場から出てくると、今度は出演者の前で足を止め、親しそうに話をして帰ろうとしなかった。自分の根っこ探しがある。伝統芸能とともに現代的な舞台表現(音楽やダンス、演出)で生徒たちが懸命に自分自身を表現していることが感動を呼ぶのだろう▼舞台の主人公である阿麻和利は、勝連城最後の王で、通説では中城城主・護佐丸を討ち、中山攻略を計画した逆臣とされてきたが、一方では民草の王として民衆から信望されたという記述もある。ここでは後者を題材にしている。居城・勝連城跡からの出土品は、盛んに海外貿易を行っていたことも示している▼今月の22日から3日連続で、地元勝連城跡を舞台に「肝高阿麻和利」が公演され、生徒たちの熱演に観客から大きな拍手が送られた▼この取り組みは、勝連町教育長の「子どもたちが自分の地域に誇りを持って生きてほしい」という願いから始まった。それに教育委員会をはじめ地域の大人たちの協力があって実現した▼主演の高校生の言葉が、その成果を雄弁に物語っている「琉球の船を世界に走らせるという阿麻和利の夢を、僕たちの夢として頑張りたい」。

(2004/10/27掲載)

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