行雲流水

 来月2日の投票日までわずかな日数を残すのみとなった米大統領選。事は一国の首脳選出でしかないがその成り行きを注視している世人は少なくない。選挙の結果は悲惨な破壊と死傷者の続発が日常化しているイラクの明日を大きく左右すると受けとめられているからである▼フロリダ州・ミズーリ州・アリゾナ州を会場に3回も催された『大統領選討論会』でブッシュ大統領は相手候補のケリー上院議員から大量破壊兵器云々の欠陥情報で「大義も真実もないイラク戦争」に突入したと批判された▼大統領は情報の多くは誤りだったと声明で認めたものの「フセインは(大量破壊兵器を製造するための)知識も手段も意思も持ち続けていた」「イラク侵攻は正しくフセインを拘束したことで世界は安全になった」と反論▼アナン国連事務総長はすかさず「イラク戦争はテロの防止に役に立たなかった。イラクの現状を考えると世界がより安全になったとは言えない」と言葉鋭く指摘した▼国際政治を専門とする学者ら全米の40州150以上の大学の729人も「イラク戦争を中心とする今日の米国の政策はベトナム戦争以降で最も誤った政策」と厳しく批判する公開書簡を発表したとワシントン発メディアは伝えている▼イラクの大量破壊兵器の査察にあたってきた国連監視検証査察委員会のブリクス前委員長もロイター通信とのインタビューで米主導のイラク戦争は失敗。戦争で残されたものは悲劇とテロリズムの鼓舞だけだと痛烈に批判している。

(2004/10/22掲載)

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