行雲流水

 米大リーグ、マリナーズのイチロー選手のバットから目が離せない。1シーズン最多安打記録257本への挑戦。達成されれば、実に84年ぶりの記録更新となる歴史的な大記録▼そのイチローを見いだしたのがオリックス・ブルーウェーブの元監督の仰木彬氏。伸びやかな育成法に定評のある仰木氏の指導がなければ、独特の「振り子打法」で日本一になることも、目の肥えたアメリカの野球ファンを魅了するスター選手になることもなかった、と言っても過言ではない▼宮古では、宮古農林高校環境班の「ストックホルム青少年水大賞」受賞が郡民に大きな希望を与えた。世界に認められたのは、宮古の地下水を守ろうと、生徒たちが8年にわたって研究を重ねた有機肥料「バイオ・リン」の研究。それを縁の下で支えてきたのが同班顧問の前里和洋教諭である▼先日、平良市内のホテルで開かれた祝賀会で、県教育委員会の山内彰教育長は「バイオ・リンが宮古の地下水を守り、農業を育てるなら、前里先生は生徒たちを守り、その才能を育てるバイオ・リン」と賛辞を贈った。生徒たちの信頼は絶大だ▼祝賀会の冒頭、代表の川平勉君らが英語と日本語で研究内容を発表した。「宮古の農業を発展させたい」と胸を張るメンバーの熱意に改めて感動を覚えた▼傍らから厳しくも温かい目で見守り続けた前里教諭は「素晴らしい生徒たちに恵まれ、私は本当に幸せな人間だと思う」と、少しだけ目を潤ませながら言った。才能が芽吹き、花開くところには、必ず情熱あふれる名伯楽がいる。

(2004/09/26掲載)

top.gif (811 バイト)