行雲流水

 いわゆる「ちゅらさん」の効果は凄い。先日の「公開ゆんたく―ちゅらさんの魅力」では、いろいろな角度からその魅力と反響が語られていた▼プロデューサーの話では、ドラマのテーマは「家族」で、その舞台として沖縄が選ばれたということである。虚構も入っているにせよ、結果的に沖縄の美しい自然や豊かな独自文化、明るく、おおらかで、たくましい(女性だけ?)県民性の紹介となり、失われていく良きものへの郷愁もあって、多くの国民の共感を呼んだ。そこには「いちゃりばちょうだい」(会ったら皆兄弟)の世界が展開されていた▼観光に来る人も増え、泡盛の移出量も激増、ゴーヤーも国民生活のなかにとけこんでいった。米国やカナダでも、ゴーヤーはゴーヤーとよばれ、食材として重宝がられているという。もちろん「ちゅらさん」効果だけによるものではないが、三味線の普及も著しく、東京をはじめ各地で三味線教室が盛況をきわめている▼沖縄についての印象も色々と変化していくが、最も大切なことはそこの住民にとってどんな社会かということである。沖縄タイムス「長寿」取材班は「食」を中心に現状を多角的に分析している▼県民1人あたりの所得は全国最下位、失業率は最悪、働き盛りの男性の死亡率が高く、自殺の割合も最悪、アルコール依存症による家庭の崩壊、子供たちの生活リズムの乱れと貧困な食、老いを支える福祉サービスの不足等▼現状を直視、よき伝統は守りながら、時代と社会の変化に対応できる社会の創造こそが求められる。

(2004/09/08掲載)

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