行雲流水

 今年の夏休み期間中、平良市島尻のマングローブ林が人気を集めた。酷暑の中で、水辺に建造された大きな石橋の上からマングローブやカニ類、鳥類、魚類が観察できる。生物は、共生共存で繁栄するから、持続可能な生態系が維持される▼マングローブという植物名はない。マングローブとは、海と陸の間の真海水に生息する植物を総称して呼ぶ。島尻マングローブ林では、根っ子がタコの足のような形をしたヤエヤマヒルギ(ヒルギ科)を中心にオヒルギ(同)、メヒルギ(同)、ヒルギダマシ(クマツヅラ科)が小群落を形成する。ヒルギダマシは、日本では宮古が分布の北限で植物地理学上、貴重な植物▼近年、諸喜田茂充琉球大学教授らが、島尻マングローブ域で珍しいカニを発見した。オオアシハラガニモドキ、キノボリベンケイガニがそれだ。多種類のカニが生息するから、野鳥が多い。過去にカモの仲間のオシドリが飛来した▼平良市は、2000年に島尻マングローブ林を天然記念物に指定し、環境保全を強化した。その後、遊歩道整備を導入。木道と石橋を合わせた遊歩道の全長は約500メートル余り。自然環境に配慮した遊歩道は、散歩の絶好のコース。1人での散歩は避け、家族や友人らと一緒の自然体験を勧めたい▼マングローブは「生命のゆりかご」、「生態系の栄養源」と言われ、生き物たちのオアシスだ。多様な生き物たちが子々孫々繁栄していくためには、1人ひとりが環境を大事にしなければならない。子供たちに自然環境を教え、そこから「生きる力」について考えてほしい。

(2004/09/05掲載)

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