行雲流水

 8月には、甲子園の高校野球とアテネオリンピックがあって、テレビを通してスポーツの面白さを堪能した。可能性を追求、ルールに従って全力を尽くす姿は美しい▼高校野球は、駒大苫小牧高校が優勝、真紅の優勝旗が初めて北海道に渡った。特に嬉しいのは、同校選手が全員地元出身だということである。過去に優勝したチームの中には、その県出身選手が1人もいなかったという例さえあった。甲子園野球は全国の生徒にスポーツすることの素晴らしさを喚起し続けている▼オリンピックは、連日多くの感動を呼んで終わったが、残念ながら依然としてドーピングに汚染されてもいる。検出されない薬も次々に開発されているというし、コーチから強要される組織的なドーピングさえも話題になる▼今のオリンピックはテレビ時代のオリンピックである。放映権料や多国籍企業をめぐって金がうごめく。なぜドーピングがなくならないか、ベン・ジョンソン選手の元同僚は答えている「栄光はあまりに甘く、ドルがふんだんに手に入るからだ」。先日、遺伝子操作による「持久力2倍のマラソンマウス誕生」―スポーツ選手への悪用懸念、という記事があった。勝利至上主義の下ではあり得ないことではない▼自国の選手を応援することは人情であるが、極端なナショナリズムは怖い。フセインは負けた選手は処罰したというし、北京へ向けた訓練も人間的な限界を超えたものであってはなるまい▼次回2008年の北京オリンピックが名実共により崇高な人類の祭典になるよう期待したい。

(2004/09/01掲載)

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