行雲流水

 柔道を初め競泳、体操などメダルラッシュにわくアテネ五輪、わが国選手の出場する各種競技から目が離せず、徹夜でテレビにかじりつく毎日となった▼ところで、アトラクション・開会式は、神話の国ギリシャにして、オリンピック発祥の地に相応しく、古代から現代までのギリシャと五輪の歴史が再現され、見るものの心をとらえ、これまでにない感動を覚えた▼古代オリンピックは紀元前776年に、いわゆるオリュンピアで始まり、1100年以上続いたといわれる。オリュンピア競技会がギリシャ全土の大会へと発展したのは、共通の最高神ゼウスへの奉納競技だったことに因る▼ところがギリシャがローマの属州となり、ローマの国教がキリスト教に変わると、異端宗教の競技会とみなされ393年、第293回大会を最後に幕を閉じるのである。皮肉にも宗教がこの競技を廃止へと追いやったのである▼近代オリンピックとなって108年ぶりに発祥の地に戻ってきた今大会だが、史上最多の202カ国・地域から1万6000余の選手、役員が参加し「平和に貢献する五輪」の原点を見つめ直す大会となった。重厚かつ華やかに展開されている大会も、シドニー五輪の3倍といわれる約7万人の警察・軍隊を動員しての警備という現実がある▼民族や宗教の壁を乗り越えたかに見えるこの祭典が、真の意味の「平和の象徴」となり永遠に存続するには、国際社会が民族・宗教紛争やテロから解放されねばならないと思う。

(2004/08/20掲載)

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