行雲流水

 夏休み真っただ中の息子と一緒に、半潜水式水中観光船「シースカイ博愛」に乗った。どうやらほかに地元客はいないようだ。リゾートファッションに身を包んだ観光客に混じり、いざ海の中へ▼広大なサンゴ礁にゆらゆら揺れるイソギンチャク、色とりどりの熱帯魚たちと、そこはさながら竜宮城の世界。「絵にも描けない美しさ」である。ちょうど満潮の時刻ということで、船はサンゴ礁の上の航路をゆっくり進む。そこに群がるブルーやオレンジの魚たちは観光客の「南国気分」を満足させたに違いない▼船を降り、人工の世界とはかけ離れた海の美しさについてガイドの女性に感想を話した。「ごみ1つありませんでしたね」と。ところが彼女によると、この日は特段きれいだったようだ。潮の流れや航路によっては、外国からの漂流物のみならず、地元の人が捨てた容器やビニール袋が目に付くこともあるとこっそり教えてくれた。特にビニール袋は、潜水窓の外をプカプカと流れていることもあるというから驚きだ▼人間が何気なく捨てたごみが、海の美しさを損なうだけでなく海に生きる動物たちの命を奪うことも珍しくない。人間の小さな「自分勝手」は少しずつ自然の生態系を傷つけ、一度壊れたそれは容易に元には戻らない▼海中をのぞいた観光客が「また宮古へ」と心に誓い、リピーターになったとしたら、その立て役者は海の中にすむ生き物たちだ。逆に白けてしまったとしたら、私たち地元の人間が招いた結果だろう▼宮古の素晴らしさに気が付いていないのは宮古の人だという指摘が多い。得てして当たり前になってしまった恵みにはなかなか目が向かないものである。「観光週間」は7日で終了したが、夏休みはまだまだ。お父さん、お母さん、子供たちと一緒に、宮古の竜宮城を観光してみてはどうだろう。

(2004/08/08掲載)

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