行雲流水

 警察庁「犯罪統計書」によると触法少年(13歳以下)の主要罪名の中で『傷害』は増加の傾向にある。平成14年度に限ってみても強盗25件・放火102件・暴行310件・恐喝473件に対し傷害は817件と突出している▼絶対数においては窃盗が1万4257件と際だっているが年度対比すると横ばいか減少の方向にある。とはいえ事件は続発している。教育評論家の尾木直樹氏は事件の背景として「個食・テレビの固有化・携帯電話やゲームの普及があり家族を壊滅状態に追い込んでいる」と指摘する▼出生率1・29(2003年)の少子化社会とあって「親に怒られる子どもはほとんどなく学校で注意したり怒ったりすると親から文句が飛んでくる。ですから当たり障りのない指導しかできない」(東京都・小学校教師)という▼ここ10年間で親の教育方法は大きく変化し子どものかわいがり方は極端になってきた。「近所の子どもたちとの関係のなかでわが子を見るという機会も乏しいので親の視野は狭くなってきています」(石川悦子臨床心理士)▼国立教育政策研究所の調査でも協調性がない子どもたちの増加は確認されている。家族でも集団社会でも適切な自己表現とぶつかり合いを通して相互信頼やルールは形成されるが「今そんなものは何もない」と尾木氏は嘆く▼傷害は協調性やルール観の欠如が転化した自己表現の歪みである。子どもたちは長い「夏休み」を迎えた。9月堂々と登校できる2学期を迎えさせたい。

(2004/07/30掲載)

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