行雲流水

 「海の日」にちなんで、「海」を見つめてみたいと思った。時に、走る船上から海を見るとその広さと水の量に圧倒され、地球は海に覆われた水の惑星だということを実感する。水が生命の誕生と進化にとって重要な意味を持つことは言うまでもない▼生命の誕生については、オパーリンのコアセルヴェートの理論から始まってアミノ酸の合成まで、いわゆる前生命体までの研究は進んでいるものの、前生命体から生命体への移行については何の手がかりもない。その方が、いろいろ考えたり、想像できる余地が残っていて、むしろいいのかも知れない▼万物流転。琉球列島は大陸と陸続きだったが、沈降し、その上に珊瑚礁が発達して、現在私たちの住む島々がつくられた。もともとサンゴは、水温が高く、海水によどみがなく、透明度が高い海に成育できると言われる。これらの条件を幸いにも黒潮がもたらしてくれた▼その結果、私たちは誇りうる美しい景観に日々触れることができる。著書『サンゴ礁の生物たち』に本川達雄氏は書いている「一生に一度は、いい音楽に心をうばわれ、また名画に感動しなければいけないように、サンゴ礁の海に一度は潜ってみなければその人の一生は、その分だけ貧しくなる」▼海はまた、海の幸をもたらす場所であるとともに交易への道であった。各地の人々との交流は「共生」の文化を生んだ。さらに豊穣や幸をもたらす来訪神は海からやってくる▼「ウミハ大ナミ、アオイナミ、ユレテドコマデツヅクヤラ」。揺れていつまで続くやら。

(2004/07/21掲載)

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