行雲流水

 変なたとえだが、1÷0=aとすると、1=a×0で、1=0となり、1の代わりにどんな数をいれても、その数は0となる。それ故に現代数学ではゼロによる割り算は禁止事項である。このような禁止事項が自然科学やその他の研究分野でもないもんだろうかと思う▼生命の尊厳は人道的、宗教的見地から歯止めがかかっていたが、現代社会はこれをなしくずしにしている。生命倫理専門調査会は「ヒトクローン胚作成容認」とのこと、当面は臨床応用せず基礎研究に限ってのことだというが、ES細胞から臓器等をつくり出そうという狙いは、やがてクローン人間の容認に繋がろう▼一方「ブルー・ローズ」は不可能の代名詞だそうだが、パンジーの青色遺伝子組み替えで、サントリーが世界初の「青いバラ」を開発したという。写真で見る限り涼しげに見えるが、素直に喜べない▼交配による品種の改良とは違い、遺伝子組み替えとなると、組み替え新種は際限なくつくられることになり、他との交配によってさらなる新種を生み出すのだから何らかの歯止めがなければなるまい▼食品でないから人に害は及ぶまいと油断してはならない。青い桜花、黒い桃花になっては、桜色、桃色は失われ、人類の文化は突然変異を余儀なくされよう、それとも人類の進化と受け止めるべきか▼「青いバラ」は世界で年間300億円の市場というが、何か「夢」や「幸」が売り物にされるようで、バラ色が急に色あせたものにならねばよいが。

(2004/07/09掲載)

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