行雲流水

 去る17日本紙に掲載された宮古高校2年青木裕志君の与謝野晶子短歌文学賞・堺歌人クラブ賞(主催・産経新聞社)に輝く―には心中大きな歓声をあげた。もう1人の生徒も入選し同一校から同時に2人の生徒が入賞入選したからだけではない▼そして同校の生徒が昨年に引き続き2年連続受賞しているからでもない。さらに中学生から大学生まで何と6325首の膨大な数の応募歌の中からみごとに登りつめ輝かしい高位賞を入手したからでもない▼詠歌「行き先を風にまかせる雲でなく真っすぐに飛ぶ鳥になりたい」の直さい的な表現に思わず身が引き締まり反射的に歓声をあげていたのである。「まかせるのではなく…真っすぐに」という確かな自己認識がすばらしい▼「ま」を意図的に「真」に置き換えたとすれば同君の感性は鋭い。漢字の語感は強調性に富んでおり漢字を選んだことは同君の上昇意識の豊かさの表れでもあるから。反面天空を自在に飛翔する鳥たらんとする優しさも持ち合わせていてほほえましい▼「都をば霞とともに立ちしかど…」(能因法師・後拾遺集)のごとく名だたる歌人でも詠歌のための詠歌に陥り真情から逸脱したりすることは稀ではない。同君の詠歌には虚勢を張った作為は微塵もない▼高村光太郎は「道程」で僕の前に道はない/僕の後ろに道は出来る/と詠んだ。人生を逞しく切り拓こうとする強靱な意志の表出である。率直で平易な表現ながら同君の詠歌の背後にこの強さを実感した。

(2004/07/02掲載)

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