行雲流水

 涼風が吹く早朝、緑内から「キョロロロロロロ―」の声が響く。アカショウビンだ。神鳥の美しい声を聞くと、1日の始まりがさわやかな気分になる▼宮古では別名「クカル」などと呼ぶ。県内のほとんどの地域では「クカルー」「コカルー」と語尾を伸ばす。琉球弧は昔から似た方言の鳥名で通じていた。地域によっては恵みの雨をもたらす世果報(ユガフゥ)鳥、日本本土では「雨ごい鳥」としてあがめた▼琉球弧北端の奄美諸島。『南島雑話』の中に、このような一節がある。「一名コハル。嶋人は神鳥と云う。3、4月に来る。好んで蝸牛(かたつむり)を食ふ。羽の色赤なり」。コハルとは、アカショウビンのこと・著者は薩摩藩士・名越(なごや)左源太。名越が、1850―1855年までの5年間、奄美大島に遠島(島流し)された時に見聞したものをまとめたもの。今では貴重な文献の1つ▼クカルは、東南アジアなどから日本の茂った林に飛来する。今の季節が繁殖期。クカルは立ち枯れた樹木に穴を掘り、そこを巣にして産卵・子育てをする▼宮古では最大の繁殖地が平良市大野山林。立ち枯れ樹木が激減し、林内の環境は一変した。時としてその樹木は無用な長物として撤去される。立ち枯れた樹木が生態系を維持する一部であることを人々は知るべし。生態系のかく乱でなかなか繁殖しない▼大野山林の人工池でダイビングするクカルの姿は涼味満点。ニックネームを「ダイビング鳥」と名付けたい。本土では田植えの時期に鳴くから「水恋鳥(みずこいどり)」の異名をもつ。干天の時に慈雨をもたらすと、すべての生物がそう快となる。

(2004/06/27掲載)

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