行雲流水

 「広い広い空のなか 1ばん星はどこかしら 1ばん星はもうとうに あたしを見つけてまってるのに…」(まどみちお)この詩は、見えないものを感性的に捉える詩人のメルヘンの世界である▼「知られる前にまず夢見られる」という言葉は、芸術だけでなく自然科学を含め総ての創造の世界を象徴していよう。作品の理解は、作者のヒントになったことを追体験するのが最もよいのであろうが、多くの場合、想像の世界にゆだねる以外にない▼その点「朗読の世界」は語り手の感性ももらい、想像を豊かにすることができるのである。沖縄可否の会(主宰三上左京氏)の宮古島公演「朗読夢舞台」が先週19日に開かれた▼「ことばや物語を肉声で丁寧にお客様に手渡していく舞台朗読の世界」、人里離れた静寂な高千穂(下地町)の嶺にステキな空間を用意いたしましたという案内に誘(いざな)われた▼「注文の多い料理店」末吉甘奈(宮沢賢治作)、「驟(はし)り雨」下地恵美子(藤沢周平作)、「おかあさんの木」中村初子(大川悦生作)、朗読者の紹介や内容にも触れたいが、この紙面では意を尽くせない。ともかく、テレビやラジオで聞く朗読とは、ひと味も二味も違い、表情豊かな語りの世界に引き込まれた▼宮古島公演実行委員会(代表玉元江美子宮古養護学校長)の空間設定への腐心にも感心した。昼間は別題で地域の生徒たちを対象に養護学校体育館で行ったという。きっと子どもらの心の琴線(きんせん)にも触れたことであろう。

(2004/06/25掲載)

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