行雲流水

 ―海よ、僕らの使う文字では、お前の中に母がいる。そして母よ、仏蘭西人の言葉では、あなたの中に海がある(三好達治)。海は、喜びも哀しみも秘めて、深く広がっている▼去る9日(日)は「母の日」。母親への思いを込めた子供たちの微笑ましい絵が新聞の紙面を飾っていた。各家庭でも、いろいろな形で、母親への感謝の気持が伝えられたに違いないが、無垢な子供時代そのものが母親への最大のプレゼントであることは言うまでもない▼そのうちに、子供たちは成人して親になり、慈愛を込めて子育てをした親も老年期を迎える。1つの特別養護老人ホームでは、数名で囲む食卓それぞれにカーネーションの籠がおかれ、特別メニューの食事には赤飯が添えられていた。寡黙になりがちな老人たちに、介護者はつとめて笑顔で声をかけるようにしていた。ある老人は身内から届いた祝電を読んでもらっていた▼施設には「感謝と調和」という言葉が掲げられている。各世代には、固有な意味とふさわしい生活がある。だから、施設はいわゆる措置施設ではなく、生活者のコミュニティー(共同社会)であるということか。したがって、家族と地域社会の協力も不可欠となる▼かつて、青少年赤十字で歌われた歌がある。だれとでも心の触れ合う愛の歌、それはお母さんにおそわった歌。だれとでも楽しく分け合う愛の花、それはお母さんにいただいた花▼3番に歌う。いつもいつも宵にでる星/それはお母さんを喜ばす星/青い優しい光をたたえて/慰めの思いに輝く愛の星。

(2004/05/12掲載)

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