行雲流水

 聖母マリアの処女受胎の話を初めて聞いたのは高校の「生物」の授業でである。それはある種の動植物で単為生殖(処女生殖)が起こることの説明の序だったと思うが、何故か処女受胎すなわち処女生殖といった話が強く印象に残っている▼雄性と無関係に子孫ができる生殖法が単為生殖だが、今思うとこの話には2つの要素が含まれていたことに気付く。1つはむろん単為生殖(単為発生)についてであり、他の1つは無意図的だったと思うが生徒たちへの性教育である▼最近の「雄なしで子ども誕生」「マウスで成功・哺乳類で初」などの報道にびっくり、魚卵などの人工単為発生とこの場合の単為発生とはメカニズムが違うが、卵子だけの操作で生まれた雌マウス「かぐや」は通常の交配で子を2回生み現在も元気だという▼クローン人間も話題になる昨今だが、雄なしで子孫ができるとなると、ただでさえ父権喪失の時代、男性不要の世の中が出現するのではと気を揉むのは早とちりか▼ところで、保健の授業などでエイズや性感染症の問題にふれると、おのずからピル(経口避妊薬)やコンドームの話をせざるをえず、生きる知恵として致し方ないと思うが▼4月21日の沖縄タイムスで「初めての性交、遅らせるには」「親子の日常対話が重要」などの見出しや年間4万件を越える10代の人工妊娠中絶、拡大する性感染症などの記事に仰天。性の問題は、まだまだタブー視されていることだと思っていたのだが。

(2004/04/30掲載)

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