行雲流水

 イラクで誘拐された日本人人質3人は解放され帰国した。当初新聞テレビが伝えていた国民の声の多くは身体損傷もなく解放された3人の姿に安堵し我が肉親が無事生還したかのような喜びに満ちあふれていた▼ところが政府与党の要人から「自己責任が欠如」「無謀な行動」「自業自得」との非難めいた批判が相次ぐやマスコミには一部ながら3人をあからさまに誹謗中傷する国民まで登場するようになった▼賛否両論が激突したイラク自衛隊派遣が絡んだ事件ゆえに『軽軽に波風を立たせた』と苛立つ政府首脳の心情が垣間見える。パウエル米国務長官はわが国政府首脳や与党要人の不快感表明とは正反対に懐の深さを示した▼日本では自己責任が取り沙汰されているがとのTBSのインタビューに同国務長官は「より立派なこと、よりよい目的のために身を危険にさらしてまで進んで行おうとしている市民がいることに日本の人々は大きな誇りを持つべきだ」▼「人質となった3人に『あなたたちは危険を犯した。あなたたちの過ちだ』と言うことはできない」と答えている。今日アラブ・イスラム諸国では「我々の神聖な土地を侵す異教徒米軍を(日本は)補給面で支援」との見方は共通のものだと言う▼そんな中での解放だった。拉致実行犯が3人はイラク国民のために尽力してきたと認識したことが解決に結びついたとメディアは繰り返し伝えた。しかし母国日本には3人への責め苦がはびこり3人の心は今なお解放されていない。

(2004/04/23掲載)

top.gif (811 バイト)