行雲流水

 第76回選抜高校野球大会が23日、甲子園で開幕、連日熱戦が展開されている。ひたむきに、果敢に、全力でプレーする高校球児の姿には、いつ見ても感動を覚える▼ところで、近年、スポーツをめぐる環境が激しく変化してきた。1つにはテレビの放映権の高騰などの影響もあって、オリンピックをはじめ、国際的な競技が興行化し、巨大な金が動くイベントになっていることである。商業主義、勝利主義ははびこり、ドーピング(禁止薬物)も国家による無理な選手強化も後を絶たない▼国内でも、選手を簡単にリストラしても、金にものを言わせて選手を掻き集めても、勝てば官軍である。おおげさに視聴者をあおる傾向も目に余る▼スポーツをする層と見る層の分化も顕著であるが「すべての人はスポーツを行う権利を持つ」という考えは世界の常識になりつつある。特に青少年にとっては重要である。全人教育にスポーツは大きな役割を果たすからである▼しかし、歪みは子供の世界にも忍びよる。「買い物に行ったら100万円は使う」と馬鹿なことを言っても、子供たちは新庄に憧れる。日本チームを応援したアイドルたちのサイン会に10数万人の子供たちが全国から集まったりする。一方で、学校の部活で汗を流して心身を鍛える生徒が減少していると聞く。甲子園の高校野球で優勝したのに、地元は白けたというケースもある。地元出身の選手が1人もいなかったからである▼甲子園の高校野球の楽しさの1つは、郷土チームを応援することである。夏の大会が待ち遠しい。

(2004/03/31掲載)

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