行雲流水

 3月の初めにかなりの寒さがあったが、例年に比べ暖冬だったという。そういえば、わが家の桜は古い葉をかなり残したまま花をつけていた。その花もアッという間に散り、もうとっくに若葉の頃となっている。暑さ寒さも彼岸までというが、沖縄の春は「うりづん」から一気に夏へと進む▼「うりづん」は「二三月(ウリミツキ)」、旧暦2・3月を指すようだ。この時期は「うりづん南風」とともに大地が潤う季節である。野山の木々は台風14号の試練に耐えて、若葉が萌え出で、デイゴは真紅の花をふくらませる。ただ気になるのが沖縄本島のダムの貯水率低下、夜間断水に踏み切るとの報▼ところで「春分の日」は「彼岸の中日」にあたり、祖先供養との結び付きが強く、戦前は「春季皇霊祭」と呼ばれ、歴代の皇族の霊を祭る祭祀であった▼戦後1948年に制定された国民の祝日としての「春分の日」は「自然をたたえ、生物をいつくしむ」というのがその趣旨である。24節気は地球の運行を自然のリズムとしてとらえたもの、人々はこれを生活のリズムとして生きる▼「natureには自然の他に性格という意味もある。日本人の性格を作ったのは日本の自然。その自然が変われば日本人の性格も変わってしまうはずです」とはC・W・ニコル氏の言、人と自然の結びつきを言い得て妙である▼さらには、草花や昆虫など生きとし生きるものは、皆つながったものとして生かされていることを今一度心に留めねばなるまい。

(2004/03/19掲載)

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