行雲流水

 去る2日イラクの2つの首都バグダッドとカルバラで多数の凄惨な死傷者をだしたテロが起きた。衛星放送が紹介した海外のZDF(ドイツ第2テレビ放送)のニュースで知った。同放送局のイラク派遣記者は「犯人は外国勢と言われている」と告げた▼同時に「アフガニアの反政府組織・サウジアラビア人・ビンラディン関係・シリアの一部勢力・アルカイダのメンバー・ヨルダン人などいろいろ言われているが実際には分かっていません」と続け結んだ▼耳にした生情報をそのまま報告していた。これに対しわが国放送局の現地記者は同日の夕刻ビンラディンかアルカイダが関与していると指摘されている旨特定して伝えていた▼錯綜する多種多様な情報をありのままに伝えるか焦点を絞って特定的に伝えるかはどうでもいいことではない。不確かな情報を特定(取捨選択)するということは伝える側の恣意的私見の介入であり結果として視聴者を方向づけることになるからである▼イラク攻撃の大義としてわが国首相までがブッシュ政権後追いで喧伝(けんでん)した「大量破壊兵器保有」云々の口実が内外の疑惑を深め米国民誘導を意図した情報操作だったのではと厳しく批判されているのも国民に対する情報の利己利用は正義に反すると断じているからである▼至言(しげん)「人間は不都合を別の言葉で表現したり現実の厳しさを甘い言葉でくるんだり都合の悪いことをいかにもみんなの役に立つような印象の言葉に言い換えたりする」(日本ペンクラブ会長・井上ひさし)

(2004/03/12掲載)

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