行雲流水

 新生銀行が株式上場にともない巨額の利益を得たことで、波紋が広がっている▼新生銀行の前身は1998年に破綻した旧・長期信用銀行(長銀)で、一時国有化されて8兆円の公的資金が投入され、再生された銀行である。その銀行を手に入れたのはオランダに籍を置く米国系投資ファンドで、国から10億円で買収、1200億円を増資して、経営に乗り出し、わずか4年余で今回株売却益の2200億円を含めて約1兆円の利益をあげている▼新生銀行は、譲渡契約を行使、国に巨額の不良債権を元の値段で買い取らせている。また国の意図に反して、貸し渋りや貸しはがしをおこない、中小企業への融資を激減させている。さらに、収益に対して国は課税することが出来ないことになっている▼「ハゲタカの横暴だ」、「戦後経済史の汚点だ」、「仕組みを作った政策当局が問題」、「国内には引き受ける人がいなかったので仕方がない」等色々な見方があるが、国民にとっては納得の出来ることではない▼一連の破綻処理で投入された公的資金8兆円のうちの4兆円は戻ってこず、国民の税金負担となる。国民1人当たり3万円の負担である。今、全国の自治体が交付税等の削減をうけて予算編成に苦慮しているが、都道府県レベルでの財源不足は全国知事会の集計で2兆6000億円である。この数字と比べてみても、4兆円の負担がいかに重いものであるかが分かる▼税金の使われ方に目を光らす契機にしたいものである。

(2004/02/25掲載)

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