行雲流水

 二十世紀は科学文明の著しい発達により人類に多大な恩恵をもたらしたと評価された。半面覇権主義や民族間の利害や宗教問題等が絡んだ紛争や戦争は絶えず国土は破壊され人心は荒廃した。それゆえに恊争の世紀揩ニも称された▼そして二十一世紀を迎えた。識者は今世紀は「平和・知性・豊かな環境を確立する世紀」となるであろうと予見した。しかし今日人類は明日も描けない不穏で不確実な現実に立たされている▼イラクでは絶大な軍事力を誇る超大国と母国占領に敵対する人民との報復戦が連日繰り返されている。目には目を歯には歯を!の怨念や破壊と死の恐怖の連鎖は今や当事国のみにとどまらない▼目の前で流血惨事が起きても驚きではないと言われる報復戦頻発の遠い国に政府は人道支援を錦の御旗に日本国民を派遣することを決定した。新たな死の恐怖に直面することを強いられる留守家族の心情を思うとやりきれない▼最愛の情を与えてくれると信じきった両親の虐待におびえ心身傷ついて生後数年にも満たない人生をはかなく閉じた乳幼児達。屈折した我欲の虜(とりこ)になって少女誘拐に溺れる未熟な大人達。国内においても異常で悲惨な事件は連日多発している▼国連の人権に関する世界宣言(前文)は「固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利を承認することは…正義及び平和の基礎である…恐怖及び欠乏(貧困)からの自由を享有する世界は人々の最高の願望である」と告げた。そんな二十一世紀でありたい。

(2003/12/26掲載)

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