行雲流水

  今年の漢字は明るく「虎」だそうである。阪神タイガースのセ・リーグ優勝にちなむも、日本一を逸したせいか、世相はパーッと明るくはない。むしろ庶民は苦しい生計のやり繰りの「虎の子渡し」であり、犯罪の氾濫は一に不況のせいでもある▼テロの脅威は「虎を野に放つ」がごとく今なお牙を研ぐ。フセイン元大統領拘束の光明はあるものの、イラク派兵は、まさに「虎の尾を踏む」の感を払拭できない。国益を大儀とするは「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の戦略と理解できぬわけではないが、なにやらこの国も曲がり角に来たという感が強い▼言わずもがなだが、旨く行けば政権に「虎に翼」を得るための権謀術数だとは、あまりにうがち過ぎたであろう▼話が飛ぶが、宮古の諺に「寅(虎)の方の海が鳴ったら大風」というのがある。台風十四号による宮古の被害総額は百六十三億円という、未曾有の大災害である。今年の干支は未(羊)だが、虎に捕らえられた羊なのか▼ところで、虎が狐を捕らえて食おうとしたとき、「私は天帝から百獣の長となるよう命じられているから、私を食べてはならない。嘘だと思ったら私の後からついてきてみなさい。百獣が私をみて逃げますよ」と言った▼虎が狐の後について行くと、獣たちは虎の姿を見て逃げだした。しかし虎は狐を恐れて逃げたと思った。「虎の威をかる狐」の寓話である。何故か何処かの国と国がミスキャストで虎と狐を演じているような話ではある。

(2003/12/19掲載)

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