行雲流水

  街には、早くもイルミネーションが飾られ、「ジングルベル」の曲が流れている。首を長くしてクリスマスを待つ子供たちにサンタクロースはどんなプレゼントを、そして夢や希望を届けてくれるのだろうか▼そのサンタクロースのモデルは聖ニコラウスだと言われている。聖ニコラウス祭で、仮面のニコラウスは子供たちに怖れられる鬼神であると同時に豊穣をもたらす神でもある。しかし、時を経て、現在サンタクロースは優しいだけのものになっている▼一八九七年、新聞『ニューヨーク・サン』へ八歳の少女が「サンタクロースって本当にいるのでしょうか」と、手紙を書いた。新聞は社説という形で返事を掲載した「この世に、愛や、人への思いやりや、真心があるのと同じようにサンタクロースも確かにいるのです」▼クリスマスやサンタクロースをめぐる物語では何と言ってもO・ヘンリーの『賢者の贈り物』である。夫のジムは大切な時計を売って、妻へのクリスマスの贈り物に櫛を買う。妻のデラは美しい長い髪を売って、時計につける鎖をかう。プレゼント交換をするのだが、歓喜の声はやがて涙に変わっていった▼我が家の末の子は、まだ文字の書けなかった頃、サンタへの手紙を書いてくれるよう、その兄に頼んだ。兄は「北極、冷蔵庫市フリーザー横町」の宛名で送ったが、返送されてきたのだった。今年も、あちこちの家庭で小さい物語が生まれてるに違いない▼「ホワイト・クリスマス」は歌う「あなたの日々が楽しく輝かしいものでありますように!」。

(2003/12/17掲載)

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