行雲流水

  去る5日NHK沖縄放送局は定番の「太陽(てぃだ)カンカン」新・沖縄文化事情の中で宮古のオトーリを紹介した。時間的にはわずか五分の放映でしたが視聴した多くの市民は過不足なく編集されていると評価▼同局がオトーリについて真正面から取りあげたのは今回で2度目である。前回はオトーリの風潮が悪しき慣習として弊害をもたらし社会から厳しく批判されていた中での放映だった▼オトーリの源と言われている祭の座における神酒回しの作法や神をたたえる口上なども真摯に紹介したが来島客とおぼしい若い女性がコップ酒をがぶ飲みしている姿を大写しで延々と放映したのが災いしたのか編集の手抜きだと糾弾された▼今回番組を制作した坂田一則放送記者は今なお宮古で逞しく息づいているオトーリの原点と社会的背景について再考。中でも年齢や肩書きを乗り越えて心を通わせあうオトーリ独特の口上に着目した▼ところで東京農大宮古島亜熱帯農業研修センターでは研修生にオトーリ作法と口上を体験させている。乏しかった酒を分かち合った宮古の先人の知恵も再評価し強制しない和をもって尊となす「オトーリ憲章」も制定▼研修生五名は国際協力機構・海外青年協力隊候補の委託生で既にシリア・マラウイ・パナマ等への派遣が内定している。協力員もしくは指導員としての現地住人への的確な意志伝達は不可欠の要件。初めに言葉あり。研修生はオトーリの口上を実演しながら簡潔で的を射た話法を学んでいるのである。

(2003/12/12掲載)

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