行雲流水

   日々の生活の他に、子供の教育費や医療・介護費、それに月二十万円の借金返済があって、八十万は必要だが、給料は三十数万円しかないので、あとは新たな借金で間に合わす。こうして、借金は月々四十万ずつ増え、生計はいよいよ苦しくなっていく▼月を年に、億を兆に、給料を税収に置き換えると、国のおおよその財政事情になる。この十年、年平均四十兆円の借金を重ね、借金残額は約七百兆円に脹らんだ。国民一人当たり五百万円を超えた借金を負った計算になる▼こうした状況下、社会保障費と地方財政への切り込みが心配される。年金問題に加えて、義務教育の国庫負担や地方自治体への交付税交付金の見直し、介護保険の本人負担の引き上げ等が検討されている▼各種の調査でも、「生活に不安」は過去最高になっている。老後の生活、収入の減少、税金や社会保険料の負担増、雇用の問題等が不安の原因として挙げられている▼本県の場合、事態は一層深刻である。「本土との格差是正」と「自立的発展の基礎条件の整備」等をめざした三次にわたる振興計画も終わり、新しい振計も始まったが、依然として県民所得は低く、失業率は高い。産業は第三次産業に片寄り、製造業は低迷、財政に大きく依存する経済体質にある。離婚率が高く、自殺者が多いのも社会の不安定さを示すものと言えよう▼「福祉と地方の切り捨て」とも言われる「改革」をめぐる各層の攻防に注目すると共に、「自立」へ向けた県民の一層の努力と、適切な施策の要求を忘れてはなるまい。

(2003/12/03掲載)

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