行雲流水

 来年度から国立大学が法人化される。各大学が自律的な運営を確保、民間的な経営手法を導入、学外者の運営参画を制度化するというものである。この制度に向けて、琉球大学でもこれまでの伝統を踏まえて、地域特性と国際性をあわせ持つ個性的な大学の将来構想の策定に当っている▼大学のこの「構造改革」は一口に言って、大学に競争原理を持ち込むものである。規制を緩和、自律的に大学を活性化することはもとより大切なことであるが、いろいろな事が懸念される▼ノーベル物理学賞を受賞した小柴氏は、独立採算制を建てまえとすれば、直接お金に関係の薄い基礎科学や文学等が冷遇されるのは必然だと、懸念を表明している。地域や産業界との連携とはいっても、都市部と地方の格差は歴然としている▼研究助成に対しても、国は重点配分の方針である。ちなみに、今年度、小柴教授等の新たな研究計画「ニュートリノの振動」は最低ランクに査定され、琉球大学の「地球温暖化とその対策」をテーマにした研究は補助対象になっていない▼先週新聞掲載の「学校の教材に役立つ大図解」は解説する。「本来、改革とは、過疎や高齢化に苦しむ地方などが、都市と同水準の社会的、経済的基盤を持つ事が出来るよう、インフラを整え、地域の活性化を図るものでなければならないが、強い都市が生き残り、弱い地方が切り捨てられる、そんなことが予感される」と▼学問や教育の世界もそうなっては困る。緑豊かな広大な裾野に、そびえ立つ世界水準の幾つもの山々が望ましい。

(2003/11/26掲載)

top.gif (811 バイト)