行雲流水

 自動販売機荒しが多発している。先日、千代田ゴルフ場に設置されている自販機二台が見るも無惨に壊され、現金が抜き取られていた。「とることも悪いが、二、三千円のために百万円もする自販機を壊すとは」、とり囲む人々は唖然としていた▼自分の「小さな」欲望のためには、他人の「大きな」災害もかえりみない精神の荒廃は、凶悪事件へと結びついて何の不思議もない。若い男女が、二人の都合で、家族を殺害するという事件も記憶に新しい▼わが国の刑法犯の発生件数は七年連続、最悪を更新している。沖縄でも、石垣で、那覇の路上で、北谷の墓地で、近年、少年たちの暴行殺人事件が多発しており、青少年たちの心の荒れようが憂慮される。世論調査でも、暮しの不安とともに、非行の増加や治安の悪化にたいする、国民の危惧の深さが分かる▼対処すべき社会の混迷も深い。暴力団が事務所を構えることのできる不思議、オウム真理教によるサリン事件の最高責任者の無罪を主張する弁護士の存在、東京上野の横丁では外国人が偽造カードを売っている▼茨城県で、少年審判で裁判官が暴走族に言った「犬のうんこも肥料として使えるのに、暴走族はリサイクルできない産業廃棄物以下だ」。この発言をめぐって、賛否の論争がまき起こった▼この反響に、『家裁の人』の毛利甚八氏は言う「権力を持つ側から物事をみる風潮が広がっている。権力の幻想にすがることで安心している」(毎日新聞)。家庭や学校、社会の当事者としての意識と行動こそが求められる。

(2003/11/12掲載)

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