行雲流水

 行雲流水
 2003・第57回読書週間中である。戦後間もない1947年に再出発したこの運動も今年で57回を数える。第1回の標語は「楽しく読んで、明日を生きよう」であった。戦争から開放された喜びと明日への希望が感じられる。昨年の標語は「自分が変わる、世界が変わる」であった。確かに世界の方は激しく変化しているが、多くの人にとって変りうる目標は不透明である▼昨今は、4、5歳の子供がパソコンを使って、折り紙を学ぶ時代である。情報が簡単に検索できる。しかし、メディアが多様化する中で、読書や読み聞かせが益々重要になったというのが児童文学者・教育者の共通した認識である▼不思議な魅力を持つ音楽がある。「千と千尋の神隠し」の主題歌「いつも何度でも」である。うたう「生きている不思議、死んでいく不思議。花も、風も、街もみんな同じ」▼不思議な魅力と言えば、池田晶子著『十四歳からの哲学』がある。存在の謎が主題である。例えば、花を美しいと思うのは、花が美しいからか、美しいと思う人の故か。人は考えることが出来る。これは不思議なことだ。これが自由の原点である▼『読書力』の斎藤孝氏は語る「本は耳をすませるものであり、対話するものである。結論を拾ってくるものではない」▼もちろん、読書には色々な効用があり、読み方も人それぞれである。ただ、情報の氾濫する時代に見落してはならない観点を拾い集めてみた。ところで、読書週間の、今年の標語は「ありますか? 好きだと言える1冊が」である。

(2003/11/5掲載)

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