行雲流水

 「地球は青かった」。人工衛星に乗った宇宙飛行士第一号ガガーリンが言った言葉である。あれから40年、人工衛星による地表探査は地球の破局的な環境破壊を明らかにしている▼深刻化する環境問題だが、有効な対処が出来ないのが現実である。この環境問題をテーマに、先日NPO現代座による「虹の立つ海」が公演され、観衆に感動と示唆を与えた▼干潟の埋め立てに反対し続ける黒田良平、意見の異なる息子とその妻、それに謎の少女ユミ。ユミが「黒田さんの吹く笛、ずいぶん遠くまで聞こえるんですよ」と言って帰ると、突然地震が起こる。3人が洞窟に逃げ込み、洞窟を抜け出てみると、そこは2050年の世界であった▼汚泥の山ができ、森だったはずの所に鳥は飛んでいない。温暖化で環境は破壊され、土壌は荒廃、その結果食糧が不足している。毒性物質による複合汚染で子供たちにいろいろな障害がでている。20世紀病と呼ばれているものである。正しいかどうかには無頓着で、自分に有利であれば地球が破滅しても従う、という人々のもたらしたものである▼良平の吹く笛の音を聞いて少女が現れ、そこで、探していた20世紀病に効くという「ハルカゼ草」を見つける。20世紀に帰ることのできた3人は、少女に、人びとのために現実と闘う人間の美しさをみる。気がつくと、空いっぱいの虹が立っていた。笛の音、春風草、少女の象徴するものが胸に響いてくる▼宮古公演実行委員会のメッセージにいわく「環境は未来からの預かりものである」。

(2003/10/30掲載)

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