行雲流水

  政府開発援助(ODA)供与国の日本を尻目に、受給国の中国は宇宙船「神舟5号」打ち上げる▼イラク復興支援では15億ドル(約1650億円)を拠出予定、EU・欧州連合の2億ユーロ(約260億円)とは桁違いである。国益を見越しての施策であろうが、見え坊の斜陽貴族にも似る▼芥川龍之介が「ただぼんやりとした不安」という言葉を遺して自殺したのは、昭和の初めである。のち「昭和の恐慌」の出現と、戦争への道を辿るのだが。今わが国は、拉致問題、自衛隊派遣、景気の低迷、自殺者の増加、犯罪の蔓延化等々、将来に対する不安がよぎる。決して歴史の轍を踏んではなるまいと思う▼ところで、きょうは、1945年国連憲章が発効した「国連の日」である。同時多発テロ以来、米国はテロ撲滅への正義の御旗をかざし、アフガン、イラクへ進攻、しかしその独善性が逆にテロを誘発するかのようだ▼ようやく、安保理で全会一致のイラク復興決議は決着したものの、仏、独、露の3カ国は多国籍軍への派兵も追加資金支援も行わないと明言。国連主導体制の構築は道遠し。覇権・国益主義では国際協調は生まれず、「デモクラシー帝国」の汚名返上はなるまい▼中国全土を初めて支配した秦の始皇帝は、諌言の臣を廃し、媚びる奸臣を重用、国威の絶頂期に崩壊が始まった。国際社会において、米国が秦の轍を踏まぬとは言い切れまい。わが国は諌める友人となるも、媚びる友とはなるべからず。

(2003/10/25掲載)

top.gif (811 バイト)