行雲流水

  9日は寒露。この節、サシバがやってくる。すでに、小椋鳥(タカの使いビー)の群れが波打って舞い上がり、その幕開けを告げている。サシバは日本列島等で繁殖、愛知県伊良湖岬、鹿児島県佐多岬を経て、南方へ渡る途中、この宮古島で一夜をあかす。その魅力は、飛翔する姿が美しいだけでなく、困難や危険を乗り越えてひたすら旅を続ける、そのけなげさが感情移入を誘う。また、「渡り」そのものの持つ神秘的な「なぞ」のいろいろが好奇心をかきたてる▼その一つ、鳥たちは、越冬地への道を経験した鳥の案内がなくても渡りをすることが出来るし、繁殖地へ帰って行くこともできる。太陽のもつ固有な黄道に沿った太陽の位置と体内時計によって鳥は渡りの方位を知ることが出来るという。天体利用方位判定説である。そう言われても、先天的にその能力を持つという事実は、依然として残る驚異である▼長旅に耐えうるための保温に必要な羽毛、また、気流を効果的に利用して揚力を生む翼の形を完成させるのに、彼らの種は何千万年の時間を要したのだろうか▼ともあれ、彼らは生まれる前からの記憶に導かれ、衝動にかられて旅に出る。旅することが生きることだからである▼彼らは、追憶や憧憬を伴って、小雨降る秋を連れて来る。空に描く鋭い直線と華麗な曲線は光と影を逆転させる。太古の響きを鳴く。この島に降りると、羽づくろいをして明日の飛翔に備える。夜が明けると呼びかけ合って飛び立ち、群れて南へ去って行く▼♪タカドーイ、デンゴ。

(2003/10/08掲載)

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