行雲流水

  道路脇の空き地に軽トラックをとめてスイカを売っていることがある。ある日、客の一人が「熟していて美味しそうなのを選んでちょうだい」と頼むと、売手の青年は「そんなのは無い」と事もなげに答えた。もう一人の客が「あら、売る人がそんなこと言っていいの」と言うと「でもそうだのに」とすましていた▼見た目には良いが、最盛期を過ぎているし収穫したてでない、これでは移入ものと変わらないからだという説明であった。丹念な栽培と収穫の喜び、生産者としての自信と誇りが見えてくる▼いま、地産地消(可能な物は地域で生産し、消費する)という運動のうねりがあって、各地で朝市や直売店が開かれていて、生産者にも、新鮮で安全な食材を求める消費者にも喜ばれている。Aコープ下地店で第3土曜日に開かれる直売市も好評である▼農家・農村が農業生産だけでなく、加工し付加価値をつけて販売することを「農業の六次産業化」という。産直売店「ぐすくべ」では、手作りの味噌を沖縄本島在住の親戚や知人十名に送るという客もいた。経済面だけでなく、伝統の技や知恵を守り、ふるさとの味を通して郷里と人を結びつけている▼多くの途上国では先進国の資本によって森林が伐採され、単一農業や牛の過密な放牧によって土地が砂漠化、自給体制の崩壊によって多くの住民が飢えている。私達が食べるハンバーガー一個分の肉のため、土地の劣化損害は数100万円にのぼるという▼地域の再生にかけた「地産地消」の重要さは、世界につながっている。

(2003/09/10 掲載)

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