行雲流水

 夏8月。南の島の子供たちはまばゆいばかりに白い砂浜で歓声をあげて夏休みを謳歌している。付き添ってやって来た家族は小高い丘べの木陰からやさしく子供たちを見下ろしのどかに手を振っている▼同じ8月の6日。広島「原爆死没者慰霊式・平和祈念式」には約4万人の被爆者や遺族らが集い58回目の「原爆の日」を迎えていた。秋葉忠利広島市長は平和宣言で世界は黒い雨が降り出しそうな情勢だと指摘。核による力の支配が原因だと米国の核政策に警鐘を鳴らした▼8月9日。「長崎原爆犠牲者慰霊平和記念式典」には6000人余が参列。伊藤一長市長は核軍縮の国際協調が崩壊の危機に瀕していると訴えた。イラク戦争を阻止できなかったことに対する無念の思いも表明した▼58年前の8月。米国は6日9日の両日広島長崎の市民に原爆を投下した。人類初の被爆地日本を訪れたいくつかの国の報道陣は余りの惨状に『非人道爆撃』と原爆使用を非難した。米国は「原爆投下がなければ米軍兵士は以後の戦闘で100万人死亡していた」と反論▼しかしその根拠となった報告書の執筆者は「100万は死傷者の予測数であり死亡予測は3、4万人」と語ったという。死傷を死亡と強調して原爆投下を正当化する米国。イラク攻撃根拠の大量破壊兵器云々が重なってみえる▼戦後58年間も止めどなく続く原爆犠牲。この1年間広島長崎で亡くなった被爆者5050人と2692人の名簿は平和の誓いも新たにそれぞれの慰霊碑に奉納された。

(2003/08/22 掲載)

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