行雲流水

 火星が地球に接近しつつある。7月ごろから、南東の空を仰ぐと全天で1番明るい星が赤く輝いていて、すぐにそれと分かる。最接近するのは8月27日午後7時ごろである。この時、太陽と地球と火星が一直線に並ぶ(衝と呼ばれる)▼地球の軌道は円に近いが、火星の楕円軌道はいびつ(離心率が大)であるため地球と火星の軌道の間隔には狭いところと広い所ができる。今回は間隔の狭い所での衝であるため、大接近になるというわけで、地球から火星を観測する絶好の機会となる▼人類は不思議な惑星「火星」に昔から関心を寄せてきた。恒星は星座に見られるように星々の天球上の位置関係は固定して見えるが、火星などの惑星はそれらの間を移動していく。しかも、止まったり、逆向きに移動したりする。火星の内側の地球が火星を追いこして行くとき、天球上では火星がこれまでとは逆方向に動いているように見えるからである▼コペルニクスは惑星のこの逆行を説明するかたちで、地動説を考えた。ケプラーはこの考えをもとに惑星の運動に対する3法則を発見する。さらに、ニュートンはケプラーの法則を分析して、万有引力の存在を発見する。火星の謎めいた運行をめぐって天文学は発達し、科学時代への糸口となったといえる▼タコのような姿をした火星人など、火星は人類の想像をかきたてもした。探査機による研究も進んでいく▼そして、地球のかけがえのなさを更に確認することだろう。そんな地球の上で、惑星仲間の「火星」を見ることは楽しいことだ。

(2003/08/20 掲載)

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