行雲流水

 また養老孟司氏の「バカの壁」からの引用だが、「人、万物流転、情報不変」だという。「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」、鐘の音は物理的には同じ響きであるが、聞く時々、人それぞれの思いで、その音は違う。鐘の音という情報は不変であるが、人はひたすら変化するというのだ▼ただ自己同一性(自分らしさ)を追及する近代的個性の発生と、その主張は、自分自身が不変の情報と化してしまい、その思い込みが個性の存在だという▼「君子豹変」は「君子は過ちと知れば、すぐに改める」の意味だが、変節と誤解を生んだのは、人々の個性確立と因果があるのだろうか▼ところで、米国の独立を祝ってフランスから贈られたニューヨーク港口にそびえ立つ「自由の女神」像は、自由と民主主義の国アメリカを象徴しよう。学生の頃の土地闘争やその後の本土復帰運動の中でも、心底では自由の国アメリカに対する敬意は失われなかったと思う▼だが今ではすっかり色あせてしまった。何故だろうと「自由の女神」に問いたいが、米国市民権を得た女神は心変わりしているかも知れない▼きょうは終戦記念日、その年々に思いがあるが、今年は 6日の広島「原爆の日」秋葉市長の迫真の平和宣言、特に「作らせず、持たせず、使わせず」の新非核3原則の提言が強く心に残る。「恐れず、ひるまず、とらわれず」の歯切れのよさが持ち味の小泉総理、その日は心なしか、声のか細さが気になった。「君子豹変」か?

(2003/08/15 掲載)

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