行雲流水

 朝芝生の庭に降り立つと足元からす〜と冷気がのぼってきた。まさかと思った。猛暑の日々がつづいているからである。信じられなくて裏に回ってみた。日照はまだ浅かったが朝日が差したコンクリート壁からは予想通り生温かい空気が漂ってきた▼白昼猛暑に喘いでいた芝は日が沈み夜露に包まれて生気を取り戻したのか朝を迎えると共に一気に孕(はら)んだ冷気を発散させたようだ。けなげな生態系である。爽快な気分になった▼夏地被植物に覆われた地表の表面温度は直射日光にさらされた裸地よりも10〜14度低くなるという。宮古空港の駐車場がスーパー等の駐車場で体感する不快な熱気や照り返しをさほど感じさせないのはブロック芝面のお陰である▼同様に猛暑の日中でも枝張りみごとな街路樹の下を走行する車は路面に宿る豊かな緑陰に包まれて車内は潤いある涼感に包まれる。落ち葉が見苦しく高木街路樹は撤去すべきとの意見は『常夏』の島にはなじまない▼かつてテリハボク(方言名ヤラウギー)が街路樹として植栽された時あの丸い実は落下すると地面を覆う。ゆえにオートバイ等の転倒事故が続出するとの予言も飛び出した。特殊事例で総体を論断する偏った意見で並木が高木に生長した今日なおその類の事故は寡聞にして知らない▼港から元沖縄宮古郵便局につづく坂道を登りながらもし両脇に街路樹がなかったらと思うとこの猛暑灼熱のアスファルト路面に鹿子まだらの緑陰をやさしく施しているホルトノキはありがたい。

(2003/08/08 掲載)

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