行雲流水

 1945年8月6日/太陽が輝き始めて間もない時間/人らが敬虔に1日に入ろうとしているとき/突然/街は吹きとばされ/人は火ぶくれ/7つの河は死体でうずまった(八島藤子)▼世界で初めて原爆が投下された広島で、今日58年目の「原爆の日」を迎える。原爆死没者の霊を慰めるとともに、広島市長の平和宣言が読み上げられ、平和への誓いを新たにする▼戦争の愚かさ、むごたらしさを知った人類だが、第2次世界大戦後も紛争は絶えず、原爆使用の危機も何度かあった。しかし、科学者をはじめ平和を願う世界の広範な人々の世論の力によって、かろうじてそれを阻止してきた▼そして今、核の恐怖は現実味を増している。北朝鮮は、あろうことか、核を取引きの手段にしている。核保有国のインドとパキスタンの対立は根深い。ロシアはソ連時代からの大量の核を持っているが、その管理は心もとない。核ジャックの危険性さえ指摘されている。昨年の平和宣言で長崎市長が名指しで批判したように、米国の核政策は独断的である。使い易い小型核兵器の開発も進められている。イラク戦争では劣化ウラン弾が打ち込まれ、放射能で土地は汚染され、白血病の多発に住民は怯えている▼今こそ、わが国には、唯一の被爆国として原爆のもたらす悲惨さを国際社会に訴え、率先して核廃絶、そして平和のために努力することが求められている▼戦争は直接的惨禍だけでなく、貧困と絶望を生む。沖縄平和賞の中村哲医師は語る「共生と融和こそ新しい時代を切り開く」。

(2003/08/06 掲載)

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