行雲流水

 先日、日本育英会の奨学生を選考するための一環として面接が行われたが、総じて、面接を受ける態度は良好で、明るく伸び伸びと自己表現がなされていた。特に、それぞれの高校生活を踏まえた、自己肯定感が印象に残る▼グループ面接の中で、部活動に努めた生徒は、集中心や耐える力の向上、他人を尊重し、協力して、共に向上することの喜びを語った。有機肥料バイオリンの研究開発に当たってきた生徒はその成果を語った。『お星さまのひみつ』で琉球新報児童文学賞を受賞した生徒は、作品のあらましと今後の抱負を語った。ラジオドキュメントで命の尊さを訴え、放送コンクールで最優秀賞を受賞した喜びを語る生徒もいた▼詩吟をたしなんでいるという生徒は、求めに応じて、皆の前に出て、杜甫の『春望』の一節を朗々と吟詠した―〈国破山河在/城春草木深〉▼日頃考えたり感じたりしていることを言い、同じ世代の語ることを聞こう、ということで自由な発言もなされた。環境問題を語る者、大きな力で罪のない人たちが殺されていく戦争の不条理を語る者、最近の少年非行についてもいろいろな意見がなされた▼家族崩壊をあげる者、自然や友達との触れ合いが少なく、テレビゲームやインターネットの仮想現実と現実との感覚的な混同を挙げる者、核家族化で祖父母からの生活の知恵が伝わらない問題点を指摘する生徒もいた▼子供たちの姿は、時代と社会を映すかがみである。「大人が大人になっていない」という発言もあった。大人はそれをどう受けとめるか。

(2003/07/30 掲載)

top.gif (811 バイト)