行雲流水

 北谷町・中2殺害事件、長崎・中1少年の幼児誘拐殺人事件のショックと言いようのないやり切れなさ。校長の言う「人の命は地球より重い」との訓話の何と空しく響くことか▼1997年の中3「酒鬼薔薇聖斗」の神戸連続児童殺傷事件に触発されたかのように、少年らによる凶悪事件が相次いだが、なお少年らの心の闇は進化するのか。「酒鬼薔薇聖斗」に対し、神戸家裁は「未分化な性衝動と攻撃性との結合により持続的かつ強固なサディズムが、本件非行の重要な要因となった」などとした▼他方で、バーチャルリアリティ(仮想現実)の世界で「死」や「犯罪」が過剰に存在するが、現実の体験ではなく、「現実に触れたい」という、いわゆるゲーム感覚が要因との指摘もある▼これらの事件で刑罰の適用年齢を16歳以上から14歳以上に引き下げる、厳罰化の方向で少年法が改正されたが(01年4月1日施行)、一層の厳罰化という法の強制力だけでは、この問題の解決にはなるまい▼確かにこの国は、権利や自由の吐き違い、性の乱れなど教育環境の退廃、倫理・道徳を含め義務の育成が脆弱である。加えて子に甘い親の増加が、自己チューを生み、同時に傷つくことを恐れる子どもらは、他者とのかかわりを避ける自己閉塞、不登校や引きこもりなどに陥る▼こうした悪循環を絶つには、先ず健全な大人社会の創出が肝要だが、「市中引き回しの上、打ち首」なる、キレル少年らのような大人では、これまた難しいか。

(2003/07/18 掲載)

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